2010年7月29日木曜日

稜線散歩

……先日の日記ではあんなことを書いておきながら、やっぱり昨日も行ってしまいました。稜線散歩。

昨日は歩荷もなく、日中もさほど混まなそうだったため、9時半から15時までの長休憩。
どこにも出ずにゆっくりするぞ!という反面、こんなに天気もいいし、ここ最近横岳縦走もしてないし、なによりもいつものペースなら余裕で昼過ぎには戻ってきて残り2時間はゆっくりできるという打算もあったところに、支配人の奥さんからの一言が背中を後押し。

「かなり珍しいんだけど、ヒナリンドウって花の写真を撮ってこれたら八ヶ岳農場アイスクリームおごってあげるよー♪」

この八ヶ岳農場のアイスクリーム、本当はお客さんに販売するように上がってるんですが、本当に美味いんですよ!
ぼくはカメラとレンズ、それにヒナリンドウの写真が載っている花図鑑の3点をいれたウエストポーチを肩がけにして、意気揚々と小屋を出発。

この時期の稜線はピークは過ぎたとはいえ、まだまだ十分に花盛り。ダイコンソウやイワオウギ、イブキジャコウソウ、ムシトリスミレ、そして特に硫黄岳山荘周辺のコマクサの大群落は見事です。
しかしどんなに注意深く周囲に気を配りながら歩いても、お目当てのヒナリンドウは見つからず。広い稜線は最初に右側を歩いて、また戻ってこんどは左側を歩くという念の入れようだったのですが。

そしたらなんと「あ、ゴメン。あれは7月じゃなくて、6月の下旬だった(^^;)」 とな。

がくーん↓↓↓↓

ですよ、もう。

しかし、昨日は嬉しいことも待ってました。なんと、半年前にぼくがNZのマウントクックでガイドしたお客さんがテント泊でいらしてたんですね。
聞けば、そのときのNZ旅行が楽しかったので、また今年の年末年始も行ってきます、とのこと。潮の加減で違うルートを歩くこともあるコースと仰っていたので、ぼくらも歩いたエイベル・タズマン国立公園かもなぁなんて当時のことを思い出したりして、ひさびさにNZの空気を吸った気分でした。

NZを気に入ってまた行くんですなんて話を聞くと、なんだかNZを好きになってくれて嬉しいような、また一年後に行けるのが羨ましいような、むず痒い気分ですね(笑)
ぼくもまたNZに行きたいよぉ〜。

2010年7月27日火曜日

夏の或る一週間

毎日暑い日が続きますね。皆さん体調はいかがでしょうか。山ではここ数日、日中はカーッと暑く、夕方になると激しい雷と共に夕立が降るというサイクルが続いています。
ところで昨日は土用の丑の日でしたが、皆さんは鰻は食べましたか?

ここは標高2340mの山の中。本当は美味しいお魚が食べたいなんて贅沢は口にも出せない場所ですが、昨日は社長が気をきかせて人数分の鰻を上げてくれたのでした!
鰻自体は中国産でしたが、なんでも「岡谷市観光協会推奨品」(たれは岡谷市特産のものでも使っているのかな?)とかいう一人前が三千円ちかくする代物でしたよ。社長の心意気に感謝しつつ、午前中の歩荷後、昼食として美味しく頂きましたm(__)m

海の日からの1週間は、いまにして思えばずいぶん頑張ったものです。

連休……前述のとおりの記録的受付&喫茶ラッシュ
火曜日……骨休みしようと午後いっぱいの半日休憩を貰えたので、ここぞとばかり文三郎登りでキレット小屋経由の権現岳往復、復路は赤岳越えて地蔵下り(所要約4時間半)
水曜日……歩荷(食材の荷上げ)
木曜日……歩荷
金曜日……歩荷。昼食後休憩(昼寝)をしていたら急遽社長に呼び出され、学校登山の入っている赤岳鉱泉で怒濤の客飯180人お手伝い
土曜日……鉱泉掃除を少し手伝ったあと行者に戻り、午後は受付&生ビールラッシュ!ジョッキが無くなっても生の注文が途切れない。団体さん多し
日曜日……前日行者泊したツアー登山の団体24名を引き連れて、朝から赤岳&阿弥陀岳ガイド
昨日月曜日……歩荷。午後の休憩中、稜線の花の撮影のため中岳道登りの赤岳越えて地蔵下り
今日火曜日……歩荷

お仕事で山を歩けるのは、仕事でずっと小屋に閉じ込められているよりかはもちろんずっと嬉しいのですが、さすがにそれが連日となると身体が堪えます。
それでも天気のよい日に休憩を貰えると、身体の疲れも後先も何も考えずに山に登ってしまうのが山好きの悲しい性というもの。

聞けば明日は歩荷無しということだから、明日こそはドコニモイカズにゆっくりするぞ〜!\(--;)

2010年7月18日日曜日

276

梅雨明けと同時に3連休。一般的に梅雨明け十日は天気が安定して良いと言われますが、初日の昨日も多少稜線がガスったりもしたものの、全体的には「いま来ないでいつ登るの!?」といった登山日和となっております。

ことに今年は「テント泊ブーム」でもきているのか、毎週週末ともなればテン場は例年にない大賑わい。
なんと昨夜のテン泊者数は歴代ダントツ1位となる267人!!!! これまでの記録が190人だったのを考えれば、いきなり1.5倍。

もう通常のテン場の範囲は昼過ぎにはテントでいっぱいになり、木々のすき間に見える森の奥にまで赤や黄色や黄緑色のテントが見え隠れし、小屋前の広場はさながら各社テントの展示会のような有り様です。
夏の忙しい日はそれぞれ売店や客飯仕込みなどの「持ち場」を終日担当することになるのですが、例年ぼくの担当はテン場・宿泊の受付と昼食喫茶の一部。しかし昨日今日はテン場受付の件数があまりにも多く、ほかの喫茶メニューには手がまわりかねるような忙しさでした。

そして連休中日の今日も、昨日ほど数字は伸びませんでしたが、199人という歴代2位の記録に。昨日連泊の受付をしていて今日は受付なしの人たちも含めれば実際は220人くらいだったのではないかと思われます。そのかわりというか、今日は上から下りてきたお客さんと下から登ってきたお客さんとで小屋前がゴッタ返し、喫茶や生ビールなどによる売店の売上がこれまた歴代最高額の記録となりました。

とりあえず明日の昼までなんとかこなせば、ホッと一息。
明日は今日ほどの受付もないだろうから、御案内の喋りすぎでガラガラになりそうなこのノドも多少は休めるといいのですが……(^_^;)

2010年7月16日金曜日

笠ヶ岳山荘へ

7月12日 新穂高~わさび平小屋(1時間)

早朝に長野を出発し、松本で平湯温泉バスターミナルまでのバスに乗り換える。平湯温泉は豪雨。梅雨時期の登山に雨は付き物とさして気にもせずに新穂高温泉行きの路線バスに乗るも、到着してみたらそこの観光案内所のおばちゃんに「いま大雨洪水警報が出てるから今回は諦めなさいよ」と諭される。
本当はわさび平から小池新道を登って鏡平山荘まで行こうと思っていたが、予定を変更し、今日は林道途中にあるわさび平小屋まで行き翌日笠新道を登って笠ヶ岳山荘に向かうことにする。わさび平小屋の手前に、今回の大雨で林道上の斜面が崩落している箇所があるが、歩いて通過するぶんには問題なし。
わさび平小屋は快適な風呂もありご飯もまぁまぁ、びしょ濡れになった雨具なども強力な乾燥室で完璧に乾き、なかなか良い小屋だった。一泊二食8000円。

7月13日 わさび平小屋~笠新道~笠ヶ岳山荘(5時間30分)

朝食を5時半に用意してもらい、準備ができたら前日の林道を10分ほど戻り笠新道入り口へ。明け方はいったん止んでいた雨がまた降り出しているが、暖かいので雨具は下のみ、上はTシャツ。
樹林帯の急登をひたすら登る。雨は弱まるどころかますます強く、休憩ごとに手拭いとTシャツをバケツ内の雑巾のように絞る。1800m付近の岩屋が雨宿りに最適でナイス。杓子平まで3時間半。杓子平から稜線までのあいだはまだ残雪が残っており、稜線直下は30mほどだが雪の急斜面をアイゼン・ピッケルで直登する。4本刃じゃなくて12本を持っていって本当に良かった。さすがは(?)北アルプス。八ヶ岳とそこまで標高は変わらないのに、残雪の量はケタ違いだ。こたろう、ナイスアドバイスをありがとう。杓子平から上は、さすがに風が強いので上もアンダーと雨具を着る。周囲は雨とガスでまったく展望がきかないが、雄の雷鳥を一羽だけ見た。
12時ちょうど、相方の働く笠ヶ岳山荘着。濡れたものを乾燥室に掛けおき、昼食に笠ヶ岳自慢の(?)「播隆ラーメン」をご馳走になる。旨い。冷えた身体に最高だ。その後も、食堂にある薪ストーブのまわりで他の小屋番さんたちとおしゃべりしながら過ごす。ほかにお客さんもいなかったため、ウチ飯を一緒にいただく。マヨネーズスープ、鶏皮炒め。

7月14日 笠ヶ岳山荘もう一泊

天候の変化はまったくなし。終日驟雨とガスが渦巻くので、歩いて10分の笠ヶ岳山頂にも行かず(むしろ一歩も外に出ず)まったりして過ごす。こたろうとバラの折り紙を折ったり、スラックラインを張って綱渡りしてみたり、暖かいストーブ周りでごろごろマンガ読んだり。この小屋はじつにマンガがよく揃っている。これならどんなに暇でも飽きることはないだろう。しかしぼくが持っていったお土産書物のなかでもっとも人気を博したのは『岳』最新刊でも『もやしもん』最新刊でもなく、例の行者小屋特集が載った『PEAKS』であった。やはりカラーページが多いのと、取り上げるファッションが若者向きなのとで好印象を抱くのであろう。
この日も客はおらず。夕食は鳥の軟骨炒め、カボチャサラダ、アジの干物など。

7月15日 笠ヶ岳~笠新道~新穂高(3時間45分)

今日もまったく同じ天気がつづく。もう今回の滞在では山頂は諦め。
朝食後パッキングをし、こたろうや小屋の皆さんに見送られてふたたび雨のなかへ。下りは笠新道を4時間とみていたが、実際は笠新道入り口まで3時間。さらに林道を1時間弱だった。

けっきょく今回の滞在では槍穂高どころか小屋からわずかの笠ヶ岳すら見ることができなかったが、もともと目的は笠ヶ岳山荘で「まったり」することだったからまぁ良しということで。なんたって休暇中だもんね♪
ひさびさにこたろうとも会えたし、小屋も若オーナーさんの下和気藹々としたじつに良い雰囲気だったのでむしろ羨ましく感じるくらいであった。

9月の休暇にでも、また来よう。

2010年7月9日金曜日

7月休暇

わーい!\(^o^)/

明後日日曜日からは1ヶ月ぶりの休暇です。前回の休暇から数えて、ちょうど30日。
夏になれば一ヶ月以上山にいるのが当たり前とはいえ、やはりこのくらいの長さになると自分に「よく頑張った!」と言ってあげたい気分になります。ことに先週今週は、本格的なシーズンインに向けて週の半分は歩荷(食材などの荷上げ)という肉体労働週間だったので、肉体的にも精神的にもホッと一息な感じです。

休暇中は例によって東京には帰らずに、相方こたろう君の働いている北アルプス笠ヶ岳山荘に行ってみようと思っています。
もともと北アルプス自体積極的に歩きにいく山域ではないので、おそらくこんな機会でもないかぎり、主稜線から一本外れた笠ヶ岳に登るチャンス(というか登ろうと思うこと)はないでしょう。来週はずっと天候がイマイチそうだけど……チラッとでも槍穂高が見れたらいいなぁ☆

今年はイタリア人も入って例年よりも従業員数が多いため、もしかしたら8月にも休暇があるかもだけれど、とりあえずこれが夏前最後のお休みだと思って、ちがう山域・ちがう山小屋の雰囲気を満喫してきたいと思います。

晴れますよーにっ!

2010年7月1日木曜日

公用語English

さてさて。ついに7月がやって参りました。連休から始まるであろう(いや始まってくれ)夏最盛期ももう目の前です。

行者小屋も昨日から従業員が増え、従業員4人体制に。支配人の家族も数えれば、全部で7人の大所帯となりました。
食事ともなれば、もともとさして広くはない受付のテーブルにどうにか全員スペースを作って、大人5人幼児2人の席とお皿を配置するだけでもひと仕事です。

しかし何よりも大変(?)なのが、小屋内の公用語が英語になったこと。実は昨日入ってきた従業員のひとりが、日本語まだまだ勉強中のイタリア人なんですね!
幸い山小屋稼業なんてのは旅好きな面々が集まるものだから、みんな多少なりとも英語が喋れるので、(日本人同士では日本語ですが)そのイタリア人の彼もいっしょの場ではついつい英語での会話がメインになってしまうのです。
お客さんにとっては不思議な光景だろうなぁと思っていたら、さっそく今日食後に「……ところで皆さんは何語で喋ってらっしゃるの?」と訊かれてしまいました(^_^;)

でも今朝テレビのニュースを見ていたら、楽天も近いうちに社内の公用語を英語のみにするとかしないとか。
実は時代の最先端……なんですかね?笑

今年も愉快な夏になりそうな行者小屋なのでした。