2009年7月25日土曜日

To ski, or not to ski. That is the question.

毎月第二・第四土曜日は「日本語読み聞かせ会」ボランティア。(6/14の記事『週末の過ごし方』を参照)
今日も今日とて、子どもたちにワーと追いかけられて、トリャーと闘い(?)を挑まれて、ギャーとしがみつかれては振りまわして参りました(勝利♪w) 最後、終わりの時間になっても帰りたがらない子どもたちを3人4人、背中と小脇に抱えて強制退場させたときは、50人でも100人でもかついでみたいと言った漫画『岳』の主人公、三歩さんの気分です。子どもって自分からしがみついてきてくれるから、同じ重さでも山小屋の歩荷なんかに比べたらよほど楽ですね。

ところで、そんな日本語ボランティアにいらしているあるお母さんから、8月中旬から9月末まで、その方の家に住み込みながらオーペア(子どもの世話を含めた家事手伝い)をしてみないかというお話をいただきました。
もしそうなれば、現在ふたりで週$200払っている家賃に、毎週かかっている食費が約$50ちょいがなくなるわけで…… うちらのいまの予定では9月末までこのフラットに居るつもりだったから、これが6週間としても約$1500(≒9万円)が浮く計算です。お給料がもらえるわけではないのですが、これだけでもかなり魅力的。
問題は、うちらが8月中旬に行く予定のクラブフィールドから帰ってきてからでも大丈夫かということと、もうひとつは、朝と午後のお仕事のあいだにスキーに行くことが出来るのかということ。相方がそのお母さんに聞いた話だと、朝子どもを学校まで車で送ったら午後3時のお迎えまではフリータイムらしく、登校時間が9時だとしたらあいだは6時間。そのあいだにスキー場に行って帰ってこられるバスがあるか、もしくは車を使わせてもらえるか。その方の自宅の住所を聞きそびれてしまったので、このへんがいまのところのネックですかね。

明日から行くマウントクックでの氷河スキーツアー'Ski the Tasman'は、小型飛行機でAoraki/Mt.Cook(3754mのニュージーランド最高峰、アオラキはマオリ語での呼び名)周辺の氷河まで飛んでくれて、そこで総計15km以上のバックカントリースキー滑走を楽しむというもの。
これが日帰りツアーでひとり$775。山岳地帯のこととて天候が不安定なので毎日催行できるわけではなく、二三日の予備日の宿泊代やレンタカー代(冬期ゆえ安いバスがないのです……)も含めれば、この小旅行にかかる総額はふたりで$1800近く!

ちなみに現在の銀行の残高、$6000弱。

やっぱり、できればオーペアでお世話になりたいですよねぇ……
まぁすべてはマウントクックから帰ってきてからということで。とりあえず明日からの4日ほど、ニュージーランド最高峰周辺の大自然(雪上滑走を含む)を満喫してきたいと思います。

2009年7月23日木曜日

Remarks! Remarks! Remarks!

【remarkable】= 注目に値する ; 並々ならぬ ; 著しい (『昭文 実用英語辞典』より)


ぼくが好きな池澤夏樹のある本で、非常に印象的に残っている一節があります。

「永遠に崩れゆく波の、絶対に崩れることのない一点としての自分……」

彼はサーフィンで波に乗る感覚をこう表現したのですが、ぼくにとってこれは、他のどんな言葉よりもテレマークスキーの面白さを説明してくれる一文でもありました。つまり、「永遠に変わりゆく雪の、絶対に乱れることのない一点」に乗る面白さです。
スキー場のつまらないゲレンデは脇に置いとくとして、バックカントリーや新雪を滑る楽しさは、その無限に変化する雪面状況にあわせて、このつま先しか固定されていない不安定な板の上で前後左右の絶妙なワンポイントを見出すところにあるといっても過言ではないでしょう。
ぼくらはその未知の雪面との遭遇(あるいは対話といっても良いかもしれません)を求めるあまり、すでに他人の滑った跡を敢えて見捨てて、新雪に板を進ませるのです。

そして数ある雪の種類のなかでも、ふかふか粉雪のパウダーは最高級!
ある日運良くそんな雪と出会えたぼくらは、雪のなかとも空のなかとも区別のつかぬ浮遊感で、まるで雲に乗って大股で世界を往くような気分を味わいながら、極上の一本を滑ることになるわけです。


さて、昨日クローズしていたあいだに降り積もった雪、スキー場の発表ではベースロッジ周辺で15cm。パトロールの人から聞いた話では、山頂部でおよそ2m!

今日のthe Remarkables はその名に恥じぬ、身も心もとろけそうな素晴らしいパウダーでした。

2009年7月22日水曜日

新雪と太陽

日本のみなさん、日食は見られましたかっ!?
本州は天候がイマイチでダメだったようですが、沖縄のあたりは良かったみたいですね。一昨年、昨年と八ヶ岳でいっしょに働いていたKは、昨年の言葉のとおり、奄美の悪石島でキャンプをしながら踊り狂っていたのでしょうか。なにせ昨年のうちから、今年は奄美で皆既日食を見るために(たった一日の、そのわずか6分間のためだけに!)「けっしてひと夏働かない」宣言をしていたくらいですから。
ぼくも、そこまではいかなくとも、やはり日本で見られる皆既日食は気になるもの。PCにいれてきた星空ソフトでシミュレートすると、なんとここクィーンズタウンでも太陽に月がかかって部分日食になっているように表示されているではないですか!これは写真を狙うべしと、今日は気合いを入れてコロネットピークスキー場へ。
本当はスキー場の斜面の向き的にリマーカブルスのほうに行きたかったのですが、ここ数日の強風が今日もおさまらず、リマークスは朝からブリザードのためオープンせず。まぁ仕方があるまい。

日本で皆既日食が見られるのが11時前後ということは、3時間の時差があるニュージーランドでは14時過ぎくらいになるはず。まぁそれまでは普通に滑って楽しもうということになったのですが、これが今日はスムーズな新雪がそこかしこに。
そう、ここ数日はようやく冬が始まってくれたかのような連日の悪天候。これまでは晴ればっかりだったクィーンズタウンの街も雨がつづいており、当然それは、、、スキー場では雪となるわけですよ!!

たった5~6cmとはいえ新雪は新雪。オフピステゾーンの、特にボウル地形の中なんかは雪が吹き溜まり、生クリームを舐めるようなパウダースノー!
リフトを降りたら、相方とふたりここぞとばかり、いそいそとダブルブラックダイヤモンドのBack Bowlへの入り口へと急ぎ登ったのでした。

ひゃっほ~ぅ!!!!


なんて楽しんでいるあいだに、時計の針は1時、2時を回り……

あれ?、、、日食は(?_?;)

やはり日食って、観測できる範囲はそんなに広くはないんでしょうね(--;)
うまい具合に空模様もほどよく雲があって、ちょうど太陽の輪郭が眩しすぎない程度に見えるくらいだったのですが、それはそれは、菅原道長の世界が「望月の 欠けたるところも なしと思」われるほどに、ぼくらの太陽も(これっぽちも)欠けることなくスキー場の背後に沈んでいったのでした。むぅぅ、残念。

まっ、ひさびさの極上パウダーはお腹いっぱいにいただけたし、ラスト一本では美しい夕景も眺められたから、好しとしますか。


(でも小さい声で……)あ~、皆既日食、ぼくもこの目で見たかったぁ。

2009年7月20日月曜日

Wanakaレポート -Cardrona Telemark Lesson-

Wanaka Trip最後の一日は、これで二回目となるCardronaスキー場。前回滑りにいったとき、毎週土曜日にだけテレマークスキーのグループレッスン(Workshop)があることを知り、土曜日のボランティアがないこの週を狙ってきたのです。
その目的は、9月にあるNZSIAのテレマークインストラクター試験に向けて、自分の技術レベルの客観的な評価が欲しかったのがひとつ。もうひとつが、こちらのイントラがどういう言葉を使いながら、どういう内容のレッスンをしているのかを実際に見てみたいということでした。

前日のうちに予約しておいた、8:15発のA Class Shuttle社のシャトルバスでスキー場へ。帰りはワナカではなくクィーンズタウンに帰るから、往復$30のところを片道のみ$20にしてくれたのはいいのですが、朝YHAまえのピックアップポイントで待っていたら、すぐ横から他の若いボーダーやスキーヤーがみんなヒッチハイクでCardrona方向に去ってゆくではないですか!ちょうどYHAまえの道がCardronaにつづく道なのもあり、ここがヒッチハイクポイントになっているようで、実際けっこう車も止まってくれています。次回来たときは、お金がもったいないからヒッチで行こっと。
バスは30分ほどでCardronaスキー場に到着。前回購入したクラブカードで一日リフト券をゲットし、今回はさらにスクールも予約。思えば、テレマークスキーをはじめてから5年、ちゃんとお金を払ってレッスンをしてもらうのは初めてかもしれません。リフト代$70に、中級者以上向けの午後のスクール代が$56。レッスンは午後2時からなので、それまではフリー。

しかしこの日は朝からかなりの強風でした。前日の予報でも南西の風が60km/hとなっていて、ベースロッジ側の斜面はとてもじゃないけどまともには滑れないほど。それでも尾根を越えたCaptain's Basinはまだ風も弱く、午前中はずっとこちらでコブやら風で運ばれたパウダーが吹き溜まっている斜面やらを攻めていきます。
でもそれも昼まで。午後に入るとますます風は強く、リフトに乗っているとスキー板にあたる風で体ごとピュオ~とリフトから吹き飛ばされるんじゃないかというほどになってきたので、慌ててベースロッジのレストランに避難。風の強さはもはや這いつくばらないと風に押されて立ち止まることもできないくらいで、ガラス越しに外を見ると、青空のもとを雲がどんどんと現れては飛ばされていき、スキー場は地吹雪で舞い上がった雪煙がスキーヤーをなぎ倒し、さすがにリフトも運転中止。
こんなんで午後のレッスンはあるのだろうか?(--;)と受付カウンターに行くと、「いまリフトは様子見で止まってるだけだから中止ではないわよ。あなたは中級者以上なんだから多少の風は大丈夫でしょう?」とか言われてしまいましたよ。

けっきょくなんとか2時前にはやや風もおさまり、リフトも運転再開。スクールの集合場所にいくと、日焼けした彫りの深い顔にあごひげがよく似合うインストラクターのBiffさんと、ここで働きながらスキーをしていてテレマークは一年目という女の子がいて、今日のレッスンはこの三人(先生と生徒二人)なんだとか。
最初にこれまでのテレマーク歴と「今日なにを学びたいか」を訊かれ、インストラクターになりたいと答えると「ほほぅ、OK」との返事。その後、とりあえずふたりともいまの滑りを見せてみろと言われ、一本滑ったら本格的にレッスン開始。

幸か不幸か、実はもうひとりの女の子(女の子だけどフレッドといった)が中級どころかまだ満足にテレマークスタンスもとれない段階だったので、Biffさんは彼女にテレマークレッスンをしつつ、ぼくにテレマークレッスンの組み立て方や教えるうえでのポイントを教えてくれたのでした。具体的には、Biffさんがぼくに○○ができるか?と訊き、ぼくがそうやって滑れるとそれを見ながらフレッドに滑りの解説をし、こんどはフレッドに××を気をつけながら滑ってみろといって滑らせているあいだに、ぼくに教え方のポイントを説明してくれるといった感じです。
これは非常にためになりました。滑りのポイント、例えば安定したポジションや上手に滑るための理論、を英語でいかに相手に説明するのか。どういう口調で、どういう言い回しで、相手に理解させるのか。インストラクターは、どのようにその日のレッスン内容を組み立てているのか。そういうことを、いちいち"Does it make sense to you?"(「これで君に理解できたかな?」)と確認しながら、進めてくれたのでした。

そして2時間のレッスンが終わり、最後にいちばん気になる質問をしてみました。それは、
「ぼくの英語力は、インストラクターを目指すうえで支障となると思うか?」
ということ。
この質問に対して、
「私はもう30年間インストラクターをやっているが、なかには2時間のあいだ一言たりとも喋らずにいてしまったこともあったよ。言葉はたいして問題じゃない。それよりも大切なのは、君が相手を上達させるためのコツを知っていて、その手本を忠実に示せることだ。人は言葉でなく、君の滑りを後ろから見て学ぶんだ」
というのがBiffさんの答えでした。また
「君のレベルは申し分ない。今日のレッスンでフレッドへのお手本として滑ってもらったくらいだからね」
とも。

のちに「よくこんなレベルで居候に来たなと思ったね」と笑いながら妙高で言われたのが一昨年のこと。鼓舞してくれるためとはいえ、このような言葉を貰えたことで不安の陰も吹き飛ばせ、改めて9月の試験に向けて志気が湧き上がってきたのでした。
そしてBiffさんがつよく勧めてくれたように、これから試験まで、なるべく土曜日はCardronaまで行ってレッスンを受けさせてもらおうと思います。お金はかかってしまいますが、やはり実際にレッスンを見て、聞いて、体験するのは得るものが大きいですから。

そんなこんなでWanaka小旅行も幕を閉じ、満足と安心と未来への希望を胸に、相方の待つクィーンズタウンまで帰ってきたのでした。

Wanakaレポート -Town of Wanaka-

というわけでWanakaレポート第二弾! ……と、叫ぶほどの内容にもならない気がするのですが、まぁいいや。

Treble Coneスキー場からの帰り、本当はノンストップでクィーンズタウンまで帰るバスなのですが、どのみちワナカは通り道なのでドライバーさんにお願いして街中で下車させてもらうことに。事前にワナカのYHAを予約していたので、なにはともあれ、まずは宿までスキー板やらブーツやらの荷物を下ろしにいきました。その後改めてスーパーで食料買い出しし、香味チキン乗せじゃが芋ペンネの晩飯を食べて、すこし五目並べなぞで遊んで(ぼくがマグネットの碁盤を持ってきたので、最近五目並べやミニ囲碁などでよく遊ぶのです)就寝。

以前もここで書いたように、この街もLake Wanakaという湖の湖畔にある小さなリゾートタウンで、スポーツショップやカフェなどがならぶ200mかそこらのメインストリートが1~2本交差しているくらいの、クィーンズタウンよりもさらに小さな(といってもNZの町なんて大抵こんなもんですが)、しかしとても落ち着いた雰囲気をもつ街並みです。それでもリゾートタウンらしく宿もけっこうあるし、大型スーパー(New World)だってあるんだから、スキー場に通って一シーズン滑りこむために滞在するにはまったく不自由しない程度の規模といえるでしょう。
ガイドブックを読むと、この街の見どころは、乗馬体験(日本の牧場などと違い、馬に乗って山野をガイドしてもらう)やスカイダイビング、トレッキング、ゴルフ、そしてもちろんスキーなどのアウトドアアクティビティがほとんど。しかし翌日起きて行動開始したぼくらがまず行ったのは、ワナカ唯一の屋内モノであるPazzling Worldだったのでした。

Pazzling Worldとは、その名のとおり「パズルの世界」!だまし絵ワールドあり迷路ありでいかにも楽しげなその場所を、出発前から相方とふたり楽しみにしていたのでした。
タウン中心部から歩くこと30分弱。愉快な外見のPazzling Worldに到着。Illusion RoomsとGreat Mazeの入場券ひとり$12.5を支払い、まずはIllusion Roomsへ。ホログラムの部屋やすべてが斜めになった部屋、だまし絵の原理で人が巨大に見えたり小さく見えたりする部屋などで平衡感覚はダダ崩れ。



(上の写真、相方が顔の立体模型の鼻をつまんでるように見えますよね?でもこの顔、本当は凹状に「彫り込んで」あるんです!)

すっかりふらふらになって、おつぎはGreat Maze。茶色い木塀で仕切られた迷路を、四隅にある4つの塔をまわってスタート横のゴールまで戻ってくるルールなのですが、、、ハマりましたよ(^^;)
最初はふたりで一緒にいたのですが、そのうち相方を出し抜いてやろうと離れ離れに。ときに曲がり角でばったり出くわしたり、出し抜いて先に塔についたり、逆に出し抜かれてくやしかったりしながら、楽しく4つの塔をクリア。しかしその後いくらどれだけ歩いても、ふたりともスタート地点にもどることができず、寒い冬の日に汗をかきかき、けっきょく半分ちかくの時間を「スタートに戻るために」費やしてしまったのでした(--;) スタートからゴールまでのタイム、1時間15分。4つの塔までは平均タイム1時間~1時間半なんて余裕じゃんと思っていたら、いやいやどうして、手強かったですね。

その後は軽食をつまみながら、テーブルにあったパズルをあれやこれやと遊んでいました。日本人学校の英語の授業で遊んでいたクレイジーカードゲームもあって懐かしい。パズル好きにはたまらない場所ですよ。
ちなみにここでは$1000の参加費で、館内100m半径のどこかに隠された2つの紙片をみつければ賞金$10000がもらえるというチャレンジもあるようです。これまでに7人が挑戦して一人も成功者は出ていないのだとか。お金に余裕のある方は挑戦してみても面白いかも(?)


その後は街まで戻り、パイが美味しいと評判のカフェでお茶をしたり、湖畔で写真撮って遊んだり。



ワナカにきたもうひとつの大きな目的は、Craigさんの親友でありワナカでAspiring Guidesというガイド会社をやっているWhitneyさんに会うことだったのですが、アポなしで行ってしまったのもあり、オフィスには誰もおらず、残念ながらまた次回に持ち越しとなってしまいました。

5時のバスでクィーンズタウンに戻る相方と、ワナカ湖の対岸の山並みに沈む夕日を見送って、ぼくはふたたびYHA泊。
ひとりでふたたびペンネを茹でてテーブルに持っていったら、そこにもいつ誰が買って置いていったのか、Pazzling Worldのパズルが置いてあり、しかもそれがいくら頑張っても完成できずに、Pazzling Worldに翻弄されっぱなしの一日となってしまったのでした。

Wanakaレポート -Treble Cone-

先日の日記のとおり、二泊三日でWanakaまでの小旅行にいってきました。といっても三日のうち二日はスキー場で滑っていたので、街自体は一日ぶらぶらしただけですけどね(^^;)

初日は、7:30クィーンズタウン発のバスでTreble Coneスキー場まで。近隣4つのスキー場の中で、クィーンズタウンの街からだとココが一番遠い場所となるのですが、普段はしない早起きにうとうとしていたらスキー場に到着。所要タイム2時間。ちなみに今回ぼくらが使ったのはkiwi discovery社のシャトルバスで、$105支払えばTreble Coneまでの移動と、さらに普通にスキー場で買えば$99する一日リフト券までついてくるというお得パッケージでした。リフト券なしのバス代だけだと$43もするのに、セットにした途端に$6って……いったいどれだけの割引ですか(?_?;)

さてTreble Coneスキー場ですが、ここはおおまかに分けて2つのエリアから成っています。ひとつがベースロッジ目の前のHome Basin(ちなみにbasinとは「お椀状の地形」のことを言います)と、もうひとつが尾根を挟んで反対側のSaddle Basinで、スキー場にはそれぞれ6人乗り、4人乗りのリフトと初心者用のプラッター(ベルトコンベアタイプのリフト)の3つがあるのみ。メインリフトが2本だけなんてなんて小さいんだ!と思われるかもしれませんが、そこはニュージーランドのスキー場らしく斜面全体どこでも滑れるので、むしろリフト5本ゴンドラ1本ある妙高(Akakan)よりもよほど広く感じられます。
Home Basinは初級~上級向きで、細く蛇行した初級コースが走っている横を、中級コースが真っ直ぐ下にのびていて、それ以外の未圧雪斜面が上級コースといった感じ。Saddle Basinはほぼ全体が未圧雪で中級~上級向き。全体的にけっこう急斜面なベイスンに、尾根や岩壁を挟んでコースが設定されています。まぁコースといっても、斜面の落ち込みに立つ、名前が書かれた看板以外にはなにもコースを規定するものはないのですが。
しかしここでなによりも驚いたのは、未圧雪の場所がすべてコブになっていたということ。下の写真は最初がHome Basin、次がSaddle Basinなのですが、とにかく斜面がコブ!コブ!!コブ!!! そしてたまに、まだ底にパウダーが残ったシュート♪



スキー場全体でパークがない上にこんなゲレンデ構成であるせいか、まったくボーダーもおらず、ぼくらはこのコブとシュートばかりのSaddle Basinが特に気に入り、この日の半分以上はこちら側で、それぞれ好きなコースを選んで滑っていたのでした。
いちど相方がリフト真下の急なシュート(ここを鮮やかに滑っているとリフトから超カッコよく見える)でこけて、そのまま止まれずにしばらく滑り落ちていたら、頭上のリフトから"Oh..."とかいう声が聞こえたんだそうで(笑)
しっかりと魅せ舞台もある、良いスキー場です。

足がパンパンになるまで滑ったら、ベースロッジまで戻って外のテラスで遅めの昼食。テルモスの暖かいミルクティーと梅しそのおにぎりが美味いのです。
その後はHome Basinのいちばん際、Mt.Aspiring(マウント・アスパイアリング)という秀峰が望めるMatukituki Basinをかるく滑って、4時発のバスに乗り遅れないよう駐車場に戻ったのでした。

終日眼下に雲海を望み、これでRemarks、Cardrona、Treble Coneの三ヶ所で初日は雲上スキーを楽しめたことになります。帰り道に途中下車させてもらったWanakaの街はどんより曇り空だったのですが、スキー場ではひっきりなしに遊覧のヘリが飛び、あるいはサザンアルプスの深遠まで見透かせそうなほど、あるいは雲海に浮かぶ山の峰々がまるで海面から聳え立つ神秘的な島のように、雄大な風景を見せてくれました。


もし来年またニュージーランドに来るとしたら、そしたら今度はWanakaにフラットを借りて、Treble Coneスキー場のシーズンパスを買いたいなぁ。

2009年7月15日水曜日

冬、これからの予定

7月15日。ついこないだ7月に入ったと思ったらはやくも半ば。そしてこれは同時に、ぼくらが日本を発ってからちょうど2ヶ月が過ぎたことも表しています。

これまではクィーンズタウンでの生活を安定させつつCoronet Peakやthe Remarkablesといった周辺のスキー場でのスキーを楽しんでいましたが、もはや生活も軌道にのって、良くいえば「安定」悪くいえば「変わり映えのない」ものとなってきました。
いよいよ、ぼくらのベースと化したここクィーンズタウンから、あちらこちらへとスキー板を担いで足をのばしてみる時期がきたようです。

まず手始めは、さっそくの明日から。ここから100kmほど北にあるワナカという街まで、二泊三日の小旅行に行ってきます!
旅程は、明日クィーンズタウンからTreble Cone(トレブルコーン)スキー場行きのバスに乗り、終日Treble Coneでスキー。帰りは(本当はクィーンズタウン往復のみのバスなんだけれど、通りかかるついでに)ワナカで降ろしてもらい、ワナカのYHAで泊。
翌日はスキーはせずに、パズリングワールドという迷路やトリックアートのテーマパークに遊びにいったり、妙高にPSIAイベントで来てくれたCraigさんの親友を訪ねてみたりしようと思います。その親友というのが、NZでもかなりハイレベルな山岳ガイド会社をやっているらしいので、いろいろお話を聴いてみたいですね。相方こたろうはこの日まででクィーンズタウンに帰宅。
ぼくは独りふたたびYHAに宿泊し、翌日Cradrona(カードローナ)スキー場へ。というのも、Cardronaでは毎週土曜日にだけテレマークスキーのグループレッスンをやっているらしく、9月の指導員試験にむけて客観的なアドバイスをもらいたいというのが狙いなのです。本当は、Cardronaへいくとリフト券代などでお金がかかるのでできるだけ敬遠したいところなのですが、シーパス券のあるコロネットピークなどではテレマークのレッスン自体がないのだから仕方がない……
というわけで午後にレッスンを受けて、帰りは前回Cardronaに行ったときにライドシェアさせてくれた日本人ボーダーの人に、またクィーンズタウンまで乗せてきてもらう、という計画なのであります。

これから帰ってきたら、次は7月末にマウントクック近くのタズマン氷河にてスキープレーンをつかった氷河スキー。
8月中旬には妙高で知り合ったうにかさんと合流し、アーサーズパス周辺のクラブフィールド(Coronet Peakやthe Remarkablesといった営利目的のスキー場と違い、スキークラブ運営の小さいながらも個性的なスキー場のこと)をハシゴ。
そして9月に入ったら、この冬最大の目的、Cardronaにて5日間かけて行われる、NZSIAというニュージーランドスキー連盟のテレマークスキー指導員検定。と同じくCardronaにて4日間行われるNZSIAの雪崩講習会。
、、、また詳細は追々書こうと思いますが、このLevel One&Twoはなんとしても合格したい!p(>_<) 言葉の壁と、現実的な話、じぶんのレベルをどこまで上げられるかが鍵ですね。

とはいえ今日は、ぼくと相方が生まれて初めてダブルブラックダイヤモンド(◆◆)=expart onlyのコースを滑ることができた、記念すべき日。
特に相方にいたっては、テレマークスキーをはじめてまだわずか一年も経っていない(そのかわり冬は妙高、夏はNZでとにかく滑走日数はふつうの人の数年分以上あるけれど……)にもかかわらず、Coronet Peak唯一の◆◆Back Bowlコースを滑ったあとに「あんがい大丈夫だったね」なんて言っているほど。なかなか目にはつかないけれど、ただ無為に滑っているばかりではなく、たしかに少しずつ上達はしているようです。
ぼくもこれからの2ヶ月半で、その成果を存分に発揮できたらと思います。

2009年7月12日日曜日

Cardrona スキー場

先日の金曜日、カードローナ(Cardrona)スキー場へ行ってきました。

本来このスキー場に行くには、クィーンズタウンから100kmほど北にあるワナカ(Wanaka)という街をベースにするのがいちばん近くて一般的です。しかしカードローナのシーズンパス券を持っていても、クィーンズタウンのほうが街としては大きいからという理由で、毎日クィーンズタウンから車で峠をひとつ越えて1時間の山道ドライブをして通う人も少なからずいるのです。
今回は、そんな一人である日本人のスノーボーダーの車に同乗させてもらってスキー場へ。クィーンズタウンからカードローナまでのバスも出ているのですが、それに乗ると片道2時間は覚悟しなければならない上に、ひとり40ドルも取られてしまいます。それにくらべ、個人の車でライドシェアをさせてもらえれば、時間は半分でかかるお金もガソリン代折半+運転のお駄賃でひとり10ドル!お得ですよね。
ちなみにこちらではシェアがわりと一般的で、コロネットピークなどのスキー場でもライドシェア専用の掲示板があるくらいで、たしかに街外れで板やボードをもってヒッチハイクしている若者をみることも珍しくはありません。

当日、まだ暗い朝7時半に街のスーパーの前で待ち合わせ、さらに途中で同じくカードローナのシーパス券を持っていて毎日いっしょに滑りにいっているという日本人ボーダーを乗せて、車は一路ワナカへと向かう山道へ。道中、すでに打ち解けているボーダー二人の会話に混じりながら1時間ほどでカードローナスキー場への入り口に到着。ここからさらに山道を20分ほどでスキー場です。途中がかなりガスっていたのでみなで天気を心配していたのですが(なにせ片道1時間以上かけて行って、ゲレンデ真っ白で滑れなかったら悲しすぎですから)、登ってみれば心配御無用、スキー場はきれいに雲海の上に出ておりました。
初リマーカブルスのときと同様、初カードローナでも雲上スキー!

いつもとは違いシーパス券がないので、まずはチケット売場へ。先週から現地のスクールホリデー(冬休み)に入ったためチケットカウンターもなかなかの行列でした。ぼくらはクラブカードを購入。このカード($35)があれば、一日リフト券が85ドルから70ドルになるという割引メンバーズカードなのです。

今日の目的はとりあえずこのスキー場の全体像をつかむこと。だいたいはパンフレットのルートマップで頭に入れておいたので、中級コースを中心に滑りながらスキー場全体をまわってみました。
おおまかにこのスキー場を説明すれば、ベースロッジのある向かって左側が初心者コースおよびパークエリアで、中央の岩山急斜面の上級コースを挟んで、いちばん奥の向かって右側がスキーヤーが好みの広い斜面やコブ斜面などとなっています。



なんとゲレンデ端には雪崩ビーコンの練習場なんてのも……


ここを滑ってみて感じるのが、全体のバランスの良さ。なだらかな初心者コース、ボーダーやフリースタイルスキーヤーが遊ぶレールやジャンプ台、レーサーのトレーニング用のポールバーン、上級者向きの急斜面などが、すべてしっかりとしたレベルで揃っていて、誰が来ても楽しめるゲレンデ構成になっています。
これが例えば、コロネットピークだとパークがないからピョンピョン跳んで遊びたい人にはつまらないし、リマーカブルスにはパークと未圧雪急斜面はあるけれど広い斜面をカービングでかっ飛ばしたい人には物足りない……というそれぞれのスキー場の特徴があるのです。これはそれぞれが役割分担をして互いを補い合っているのだけれど、裏を返せばそこが単一のスキー場としては弱点であるわけで、なるほど「どこのスキー場がいちばん良いか」という質問で返ってきた答えをまとめれば「(交通の便が良いコロネットピークなどよりも)カードローナスキー場」という人がもっとも多くなるのも当然の結果といえるでしょう。

うちらはたまに写真など撮りつつ、いちばん右側のCaptain's Expressを中心に、緩いコブにチャレンジしてみたり(ちなみにNZに来て初めて見たコブでした)、ほんの1~2mのちょっとした岩の段差をピョンと飛び出してみたり、広い斜面をギュィーンと滑ってみたり。お昼は家から持っていったサンドイッチのほかに、Cafeで生地から手作りしているピザを一ピース買って日当たりの良いベンチでいただいたりと、ひさびさの「おでかけ」を満喫したのでした。



ちなみにこのスキー場では、毎週土曜日にだけテレマークのグループレッスンがあるとのことなので、来週の土曜日にでも参加してこようかと思います。現在の日本と違い、ニュージーランドでは常設のテレマークスクールがそれほど多くないように思われるので、どんなレッスン内容なのか、ちょっと楽しみですね♪

p.s. そういえば、このブログからリンクしている「うっしーのウェブアルバム」を(実にひさびさに^^;)更新いたしました。お暇なときにでも写真を覗いていってくださいませ~

2009年7月7日火曜日

Queenstown Winterfestival -3-

気がつけば日曜日にQueenstown Winterfestivalが今年の幕を閉じてから、はや二日が経っておりました。この二日間していたことといえば、土曜日のイベントで再発した熱を下げるためにほとんどベッドからも降りずじまい。熱こそようやく下がったものの、いまだ土曜日の興奮が冷めやらぬのか、頭の中は複雑な思考をするのも億劫で茫としているばかりです。

・・・・・・・・・・

土曜日。

朝4時半に起床し、朝食にパスタを食べ、5時半に予約していたタクシーでスキー場へと向かう。こんな早朝には普段使っているスキー場行きのシャトルバスもないからタクシーを頼んだのだが、スキー場までの片道で52ドル(これでも10ドルまけてくれたのだが)も取られてしまった。まだ外は暗いとはいえ山の白い稜線がうっすら見えるくらいの薄明のなかに、ふだんは見慣れぬ星座たちがきらめいている。

5:55am、コロネットピークスキー場着。

Festivalのパンフレットによると、6時半にスタートする"Skin to the Summit"への参加者は、6時15分までに現地に集合し安全に関するブリーフィングに参加しなくてはならない、とあるのに他の参加者どころかイベント主催者もいない。オープン準備をしているカフェテリアの中に入れてもらい待っていると、ぼつぼつ山ヤっぽい人たちが入ってきた。同じく説明文には「今日はいつまでもベッドにはいってないで、スキー板にシール(Climing Skin)を貼って、頭にはヘッドライトをして、まだ誰もいないスキー場のてっぺんで壮大な日の出を見よう!」と書いてあるのに、いつまでたってもイベントが始まる気配もなく、だいぶ空も明るみはじめた7時過ぎに背番号入りのTシャツが配られ、ようやく7時半にスタート。参加者は全部で30余人。超軽量の板とブーツのバリバリ山岳レーサーから山スキーヤーにテレマーカー、スノーシューはさすがにいなかったが、ひとりだけスプリットボード(縦に割ってシールを貼って登れるスノーボード)という足並みである。

しかしぼくらにとって最大の誤算は、タクシー代でもスタート時間でもなく、じつはこのイベントが「順位を競う」競技であったということで、山に登るのは大好きだけれどシールを使ってのスキー登行が大の苦手で、おまけにまだ咳をゲホゲホやっている相方こたろうがスタートと同時に遅れはじめ、そのまま頂上までふたりしてしんがりを守り続けたのだった。
トップでゴールした人のタイムが19分、ぼくらはたぶん50分くらいだっただろう。頂上部は生憎のガスの中で日の出なぞ望めようもなかったが、普段は多くのスキーヤーでおちおち立ち止まってもいられない中腹部からの朝の眺めはなかなか気分の良いものである。

ベースロッヂまで滑って帰ると、他の参加者はすでに朝食を食べはじめている。ぼくらもスタッフのひとにBig Mountain Breakfastと書かれた引換券をもらいレストランにいくと、いろんな一品物から好きなものを選んでよいらしい。お姉ちゃんに「全種類でできるだけたくさん」といったら、スクランブルエッグからベーコン、ソーセージ、ベークドビーンズ、マッシュルームのクリーム煮、焼きトマトなどがトースト二枚にどんと乗って出てきて、寒いなか一登りしたあとのこの見ただけで満腹になれそうな朝食が嬉しい。
朝食後に行われた表彰式では、上位入賞者にイベントロゴ入りのダウンベストが贈られ、一位だった人にはアドベンチャーラフティング2名様ご招待券か何かまでついていた。

もうこの時間になると一般客用の一番リフトも動きはじめていて、朝イチのきれいなピステバーンをここぞと滑っているお客さんも多いのだが、ぼくらは数本滑っただけで休憩。ぼくが参戦する12時からのダウンヒルレース"Dash for Cash"にむけて、お疲れ気味のひざを休ませるためである。

12:00pm、Dash for Cash レーススタート。

その名のとおり、現金(Cash)にむかってスピード(Dash)を競う競技である。優勝者には現金500ドルが与えられる。参加者はゲレンデ中腹のスタートラインから「走って」スタートし、急坂手前で「板を履き」、斜面を飛び出し、途中を横切るゲレンデコースを無視して一直線に斜面をくだり、ゴールライン手前で「板を脱ぎ」、回れ右して斜面5mうえに刺さった旗まで「登って」から、最後ゴールラインに「滑り降りる」。
ぼくは最初の「板を履く」時点で遅れ(テレマークはアルペンに比べ脱ぎ履きが手間だからだ)、22~3人中「下から」5位以内くらいだったと思う。なにしろゴールするころは走って滑って登って下って、もう息も絶え絶えだ。観戦していた相方によると、トップ集団(地元のレースチームの面々)は飛んでるように滑ってきて、後続がこないのでレースが二部に分かれてると思ったほどらしい。何年か前にこのレースで優勝した日本人テレマーカーの藤川健さんはいったいどれだけ速かったのだろう?
それでも滑りきった満足感とレースの面白さに笑いが止まらず、もうひとり参戦していたテレマーカーとハイファイブ。朝のヒルクライムと昼のダウンヒルではやくもひざが悲鳴を上げている。





Festivalのイベントはまだまだ続く。
おつぎはSuitcase Race。ベースロッヂ手前の緩いスロープにネットを張り、そこをスーツケースで滑りおりて順位を競うというもの。とはいえ、競技斜面が若干斜めっているため、みな素直にまっすぐは滑れない。スーツケースはひっくり返るし、ネットには突っ込むし。おまけに参加者の中には着ぐるみを着てたりするから、もう笑えればなんでもあり的ノリである。
ちなみにチャンピオンは、自前のスーツケースにトライアスロン用の自転車のハンドルをつけ、全裸で(!)の出場で、観客をおおいに沸かせていた。彼の勝利に惜しみない拍手が贈られたのはいうまでもない。



1:45pm、Sliding-Seat Race。

Suitcase Raceと同じスロープを、今度は二人一組で、写真のイス型ビーチボールで滑るというもの。一人が座ってもう一人が後ろから押し、下まで行ったら再び上まで戻って、乗る役と押す役を入れ替えてゴールというルールである。相方こたろうが一念発起して登録するも、いざ競技がはじまってから「二人一組」であることを教えられ、あわててうっしーも強制参加させられた。
スーツケースでみなが斜面左手に落ちていきネットに引っかかるのを見ていたから、スタート直後にわざと遅れて右手に寄って、みなが引っかかっているあいだにゴールしようとの作戦をひそかに立てたのだが、うちらのひとつ右手のペアが子供との参加でスタートダッシュがうちらより遅く、見事に作戦失敗。それでもうっしーが押した前半はまだ良かったが、こたろうが後ろにまわった後半はうっしーの座ったイスの滑る速度にこたろうが追いつけず、こたろうは雪の斜面を引きずられるは、うっしーはネットに一直線で雪にまみれて転がるは…… あえなく一回戦敗退であった。

これでふたりともイベントに参加できたし、Festivalを満喫できてヨカッタヨカッタと思いきや、最後の種目"Melody Chair"の参加者がまだ集まってないから君も参加したまえと、謎のおっさんに(有無を言わせぬ態度で)勧誘される。
「簡単だ、小学校でやったことあるだろ」と言われるが、果たしてMelody Chairがなんなのか想像もつかず「どんなのだ?」と訊きかえしたら「椅子の周りをみんなでまわって、音楽が止まったら椅子に座るんだ。簡単だろ」との返答。ああ、イス取りゲームね!知ってる知ってる!!
予想外のSliding-Seat参加でかなり身体中に疲労がたまっていたが、ここまできたら最後まで楽しむべしと二人で参加申し込み。

2:30pm、Melody Chair。

普通にみんなで輪になってやるのかと思ったら、なんとご丁寧にこのイベントのスポンサー様であるニュージーランド航空の飛行機の絵のなかに、パイプ椅子が背中合わせに2列並んでいる。最初30人ほどでスタートし、一度に5人ずつが椅子に座れずに落とされてゆく。参加者は小さい子どもから女性からガタイの良いアンちゃんまでいるが、みな手加減などという言葉は知らぬが如く、けっこうシビアである。
うちらは最初の考えが至らずに隣り合ってスタートしてしまい、まず相方が数回目で落ち、ぼくも中盤で(前にいた男の子もろとも)ガタイの良いアンちゃんに撥ね飛ばされて失格した。最後の方になるとしだいに参加者も賞品目当てにあくどくなってきて、仲間のうちのひとりを前後で挟んで、なるべく真ん中のひとりのスペースを拡げて椅子を確保させようとしたり(しかし何の因果か、その作戦を実行して最初に消えたのがその真ん中にいた女性だった)、残ったひとつの椅子をふたりでつかんで引っ張って奪い合ったりなんかもあって(観客はこんなときこそヤンヤヤンヤの大声援だ)、しかしそれはそれで盛り上がるから司会者もたいして咎めないのである。



優勝者のプレイは見事であった。最後のふたりが決勝に残ったとき、ふたりは音楽が鳴りだす前、互いの健闘を祈るかのように握手をした(たしか最初に手をさしだしたのは優勝したほうだった)。司会者がマイクで叫んだように、なんとそれはスポーツマンシップに則った友情であっただろう。
決勝のテンポの速い音楽が鳴りだし、ふたりは椅子から1m離れてぐるぐるまわる。音楽は止まらない。音楽はまだ止まらない。まだ止まらない、止まらない、止まらな……
と、その瞬間にふたりが反応した。ひとつしかない椅子の「まえ」にいた男と、「うしろ」にいた男が椅子に跳びかかる!イス取りゲームの最後のふたりなんて、椅子が向いているのは一方向でしかないんだから、ほとんど運任せだ。椅子の「まえ」で止まればそのまま座れるし、「うしろ」なら残念だ。「まえ」の男は当然すべき行動をした。いくら勢い余って倒れようとも、おしりから突撃して椅子に腰を掛ける以外にどんな良策があるというのか!
しかし結果は、(ただひとり優勝した男を除いて)だれもが瞬間におもい描いた結果とは違っていた。「まえ」の男の尻はむなしく雪の上に落ち、そのむこうで「まえ」の男が後ろを向いたその刹那に椅子の背をつかんでじぶんの胸元に引き寄せてしまった「うしろ」の男が、悠々と、雪面に下ろした椅子のうえに腰をかけたのである。
一瞬遅れて事態をのみこんだ観客からは、「まえ」の男を気の毒がる声と「うしろ」の男のあまりに見事な狡猾さへの拍手が巻きあがったのだった……

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こうしてWinterfestival中、ゲレンデ最大のイベント日が幕を閉じたのです。長かった……(書くのが。読んでくれた人もありがとうございますm(__)m)
結局ぼくはこの日、Suitcase Race以外の全イベントに参加し、賞金は1セントたりともゲットすることはできず、体は疲労困憊わずかに動くことも億劫で、治まっていた熱も当然のようにぶりかえし、朝8時半以降なにも食べてないのにバナナとミルクティー以外は口にもできないという散々さながらも、Festivalを全力で楽しんだという満足感に包まれていたのでした。

最初の日記にも書いたとおり"Winter Starts Here"、本格的な「冬はここからはじまる」わけですが、ぼく的にはここでひとまず一段落。
レースの疲れを十分に癒したら、つぎはWanakaの近くにあるCardronaスキー場や、Treble Coneスキー場にも足を延ばしてみたいと思います。Cardronaは9月にテレマークスキー指導員の検定キャンプがあるところだし、Treble Coneには妙高に来てくれたCraigさんの旧友がいるとのことで、共に日本出発まえから楽しみにしていた場所。

というわけで、一段落とはいえ、まだまだニュージーランド・スキーレポートは続きます。お楽しみに!

2009年7月3日金曜日

クィーンズタウンの一風景

たったひとつの事例を以って全体を測ることの無謀さを知らぬではないが、しかしやはり全体は個々の事例の積み重ねで構成されているのであって、ここに載せた例も現在のニュージーランドの(あるいはクィーンズタウンという街の)、少なくとも一部の現状を表しているのである。

同じフラットをシェアしているブラジル人のレイチェルが、突然ぼくらにまだまだたくさん残っている食材や日用品をくれると言ってきた。
聞けば、今週末にフラットを引き払って国へ帰ることにしたらしい。それで余った食材をタダでいいから貰ってくれというのだが、それにしても結構な量である。きっと帰国することを決めたのもつい数日前のことなのだろう。彼女がここに入ってきたのはほんの数週間前のことで、あまりに突然のことで相方とふたり驚かずにはいられなかった。
しかしここ数日、彼女が居間の電話にむかって、おそらくは故郷の家族とでも話していたのだろう、ぼくにはなんと言っているかは分からないが涙声のポルトガル語でしゃべっているのを幾度か聞いた。
実際、彼女は(まちがいなく)ぼくらより真面目に仕事を探していたにもかかわらず、その靴底の擦り減った厚さに見合うほどの結果には恵まれなかったようである。彼女は言った。

「仕事はぜんぜん見つからないし、友だちも少ないからね」と。

また、

「目ぼしい仕事は全部西洋人に持っていかれちゃうんだもん。英語を母国語とするのがいくらでもいるのに、(英語のネイティブじゃない)わたしたちに貰える仕事なんてないわよね」

とも。

これはまさに、ぼくらが暮らす現在のクィーンズタウンだ。
ぼくらが応募したスキー場の仕事も、実際に現場にいってみれば働いているのはみな英語圏からの若者ばかりで、それ以外の人間といえば、ぼくらが見たうちではもう何年もここで働いているという日本人がたったひとりいた位のものである。新聞の求人広告には"English as First Language"(英語が母国語であること)とか"Must speak fluent English"(英語が流暢にしゃべれること)といった文字が珍しくない。むしろ日本人のぼくらは、ブラジル人の彼女に比べたら、日本料理屋や日本人経営のお土産屋などがけっこうあるぶん恵まれているのかもしれない。
7、8、9月は世界中からスキーヤーやスノーボーダーが集まって、街もにぎやかだし仕事だっていくらでもあると聞いていてイメージしていたのとは随分違うような気がして、思わず首をかしげてみたくなるのが現実である。
はたして先の世界株安の影響がまだ残っているのか、豚インフルエンザのせいで観光客が少ないのか、それともただ噂だけが一人歩きしていただけで実際は毎年こんなもんなのか、その原因を究明するにはぼくにはあまりに荷が重すぎるのでやめておこう。

ただここに在るのは、真摯に仕事を求めてやってきたブラジル人の女の子が明日この街に見切りをつけて出ていくという、所詮はこの社会全体にしてみれば取るに足らないほどの些細な出来事であり、それがたまたまぼくらの目の前で発生したという、それだけのことである。

さて残される側のぼくも、つい先日、また新たに仕事応募先用にカバーレター(履歴書に添える自己アピールの手紙)を書いたところであるが、、、はたして。

2009年7月2日木曜日

Queenstown Winterfestival -2-

さて、Queenstown Winterfestival はまだまだ、日夜続いております。



火曜日は夜半から『懺悔の火曜日』(Mardi Gras)と題しての仮装パレードが。この夜は湖畔のメインステージのほかにすぐ近くのメインストリートにもサブステージができ、メインステージではミニゲームを交えたトークショーや招待アーティストによるコンサート、サブステージでは地元の高校生でなるバンドの演奏と、観光客地元市民それぞれが楽しめる内容でした。この日ばかりはと、ちいさい子どもたちもピカピカ光るスティックを親に買ってもらってはうれしそうに振り回しています。
そしてそのリズムに乗っているとどこからともなくドンチャンした音が聞こえてきて、なんだなんだと人垣に紛れこんだら、目の前にはドデカい仮面顔が!

どーん!!!!


みなさんこの日のために一生懸命つくったのでしょうか?或いは白銀の、或いは赤銅色の面々が、オレンジ色の街の灯に照らされてリアルに、そして妖しげに、夜の空に浮かび上がっては目の前を通り過ぎてゆくのでした。

パレードのあとは寒くなってきたので、引き返すことに…… しようかとも思ったのですが、せっかくのお祭りモードだからと、やや尻込みする相方を(なかば強制的に?)説得して街のカジノへ。まぁカジノと聞いて尻込みする相方の気持ちもわかりますけどね。なにせぼく自身、前回卒業旅行でニュージーランドに来たときに同行のOくんに誘われてオークランドのカジノに足を踏み入れてみたのが初体験。そこではなにも遊びはしなかったものの、カジノが、それまで自分がイメージしていたよりも、だいぶ気軽に楽しめる場所であることを知ったのです。
日本人はよく幼く見られると聞きますが、入り口のガードマンに年齢を確認するためのIDをふたつ見せろといわれ、パスポートのコピーと日本の運転免許証とじぶんの顔をじろじろと見比べられること15秒。晴れて入ることを許可された屋内は暖かく、外の若々しいお祭りムードとはまた別な、シャレた大人の賑わいであふれておりました。
ちなみに収支はといえば、15ドル(≒900円)の元手で、26ドル(≒1560円)をゲット!差し引き11ドル。さらにパレード見ながら食べたクリーム添えアップルクランブル5ドルを引けば、この日の最終損益+6ドル(≒360円)。

、、、まっ、所詮は根性もお財布も「ぷあー」な我々のことですから、カジノゆーてもカワイイものですよね(^^;) でもひそかに、きっと20ドルあればつぎは50ドルくらいには($w$)なんて想像もしていたりして♪

とイイ気になっていたら、昨晩から微熱でスキーもお休みしているうっしー&相方こたろうでした。

、、、天罰??(--;)