2009年7月7日火曜日

Queenstown Winterfestival -3-

気がつけば日曜日にQueenstown Winterfestivalが今年の幕を閉じてから、はや二日が経っておりました。この二日間していたことといえば、土曜日のイベントで再発した熱を下げるためにほとんどベッドからも降りずじまい。熱こそようやく下がったものの、いまだ土曜日の興奮が冷めやらぬのか、頭の中は複雑な思考をするのも億劫で茫としているばかりです。

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土曜日。

朝4時半に起床し、朝食にパスタを食べ、5時半に予約していたタクシーでスキー場へと向かう。こんな早朝には普段使っているスキー場行きのシャトルバスもないからタクシーを頼んだのだが、スキー場までの片道で52ドル(これでも10ドルまけてくれたのだが)も取られてしまった。まだ外は暗いとはいえ山の白い稜線がうっすら見えるくらいの薄明のなかに、ふだんは見慣れぬ星座たちがきらめいている。

5:55am、コロネットピークスキー場着。

Festivalのパンフレットによると、6時半にスタートする"Skin to the Summit"への参加者は、6時15分までに現地に集合し安全に関するブリーフィングに参加しなくてはならない、とあるのに他の参加者どころかイベント主催者もいない。オープン準備をしているカフェテリアの中に入れてもらい待っていると、ぼつぼつ山ヤっぽい人たちが入ってきた。同じく説明文には「今日はいつまでもベッドにはいってないで、スキー板にシール(Climing Skin)を貼って、頭にはヘッドライトをして、まだ誰もいないスキー場のてっぺんで壮大な日の出を見よう!」と書いてあるのに、いつまでたってもイベントが始まる気配もなく、だいぶ空も明るみはじめた7時過ぎに背番号入りのTシャツが配られ、ようやく7時半にスタート。参加者は全部で30余人。超軽量の板とブーツのバリバリ山岳レーサーから山スキーヤーにテレマーカー、スノーシューはさすがにいなかったが、ひとりだけスプリットボード(縦に割ってシールを貼って登れるスノーボード)という足並みである。

しかしぼくらにとって最大の誤算は、タクシー代でもスタート時間でもなく、じつはこのイベントが「順位を競う」競技であったということで、山に登るのは大好きだけれどシールを使ってのスキー登行が大の苦手で、おまけにまだ咳をゲホゲホやっている相方こたろうがスタートと同時に遅れはじめ、そのまま頂上までふたりしてしんがりを守り続けたのだった。
トップでゴールした人のタイムが19分、ぼくらはたぶん50分くらいだっただろう。頂上部は生憎のガスの中で日の出なぞ望めようもなかったが、普段は多くのスキーヤーでおちおち立ち止まってもいられない中腹部からの朝の眺めはなかなか気分の良いものである。

ベースロッヂまで滑って帰ると、他の参加者はすでに朝食を食べはじめている。ぼくらもスタッフのひとにBig Mountain Breakfastと書かれた引換券をもらいレストランにいくと、いろんな一品物から好きなものを選んでよいらしい。お姉ちゃんに「全種類でできるだけたくさん」といったら、スクランブルエッグからベーコン、ソーセージ、ベークドビーンズ、マッシュルームのクリーム煮、焼きトマトなどがトースト二枚にどんと乗って出てきて、寒いなか一登りしたあとのこの見ただけで満腹になれそうな朝食が嬉しい。
朝食後に行われた表彰式では、上位入賞者にイベントロゴ入りのダウンベストが贈られ、一位だった人にはアドベンチャーラフティング2名様ご招待券か何かまでついていた。

もうこの時間になると一般客用の一番リフトも動きはじめていて、朝イチのきれいなピステバーンをここぞと滑っているお客さんも多いのだが、ぼくらは数本滑っただけで休憩。ぼくが参戦する12時からのダウンヒルレース"Dash for Cash"にむけて、お疲れ気味のひざを休ませるためである。

12:00pm、Dash for Cash レーススタート。

その名のとおり、現金(Cash)にむかってスピード(Dash)を競う競技である。優勝者には現金500ドルが与えられる。参加者はゲレンデ中腹のスタートラインから「走って」スタートし、急坂手前で「板を履き」、斜面を飛び出し、途中を横切るゲレンデコースを無視して一直線に斜面をくだり、ゴールライン手前で「板を脱ぎ」、回れ右して斜面5mうえに刺さった旗まで「登って」から、最後ゴールラインに「滑り降りる」。
ぼくは最初の「板を履く」時点で遅れ(テレマークはアルペンに比べ脱ぎ履きが手間だからだ)、22~3人中「下から」5位以内くらいだったと思う。なにしろゴールするころは走って滑って登って下って、もう息も絶え絶えだ。観戦していた相方によると、トップ集団(地元のレースチームの面々)は飛んでるように滑ってきて、後続がこないのでレースが二部に分かれてると思ったほどらしい。何年か前にこのレースで優勝した日本人テレマーカーの藤川健さんはいったいどれだけ速かったのだろう?
それでも滑りきった満足感とレースの面白さに笑いが止まらず、もうひとり参戦していたテレマーカーとハイファイブ。朝のヒルクライムと昼のダウンヒルではやくもひざが悲鳴を上げている。





Festivalのイベントはまだまだ続く。
おつぎはSuitcase Race。ベースロッヂ手前の緩いスロープにネットを張り、そこをスーツケースで滑りおりて順位を競うというもの。とはいえ、競技斜面が若干斜めっているため、みな素直にまっすぐは滑れない。スーツケースはひっくり返るし、ネットには突っ込むし。おまけに参加者の中には着ぐるみを着てたりするから、もう笑えればなんでもあり的ノリである。
ちなみにチャンピオンは、自前のスーツケースにトライアスロン用の自転車のハンドルをつけ、全裸で(!)の出場で、観客をおおいに沸かせていた。彼の勝利に惜しみない拍手が贈られたのはいうまでもない。



1:45pm、Sliding-Seat Race。

Suitcase Raceと同じスロープを、今度は二人一組で、写真のイス型ビーチボールで滑るというもの。一人が座ってもう一人が後ろから押し、下まで行ったら再び上まで戻って、乗る役と押す役を入れ替えてゴールというルールである。相方こたろうが一念発起して登録するも、いざ競技がはじまってから「二人一組」であることを教えられ、あわててうっしーも強制参加させられた。
スーツケースでみなが斜面左手に落ちていきネットに引っかかるのを見ていたから、スタート直後にわざと遅れて右手に寄って、みなが引っかかっているあいだにゴールしようとの作戦をひそかに立てたのだが、うちらのひとつ右手のペアが子供との参加でスタートダッシュがうちらより遅く、見事に作戦失敗。それでもうっしーが押した前半はまだ良かったが、こたろうが後ろにまわった後半はうっしーの座ったイスの滑る速度にこたろうが追いつけず、こたろうは雪の斜面を引きずられるは、うっしーはネットに一直線で雪にまみれて転がるは…… あえなく一回戦敗退であった。

これでふたりともイベントに参加できたし、Festivalを満喫できてヨカッタヨカッタと思いきや、最後の種目"Melody Chair"の参加者がまだ集まってないから君も参加したまえと、謎のおっさんに(有無を言わせぬ態度で)勧誘される。
「簡単だ、小学校でやったことあるだろ」と言われるが、果たしてMelody Chairがなんなのか想像もつかず「どんなのだ?」と訊きかえしたら「椅子の周りをみんなでまわって、音楽が止まったら椅子に座るんだ。簡単だろ」との返答。ああ、イス取りゲームね!知ってる知ってる!!
予想外のSliding-Seat参加でかなり身体中に疲労がたまっていたが、ここまできたら最後まで楽しむべしと二人で参加申し込み。

2:30pm、Melody Chair。

普通にみんなで輪になってやるのかと思ったら、なんとご丁寧にこのイベントのスポンサー様であるニュージーランド航空の飛行機の絵のなかに、パイプ椅子が背中合わせに2列並んでいる。最初30人ほどでスタートし、一度に5人ずつが椅子に座れずに落とされてゆく。参加者は小さい子どもから女性からガタイの良いアンちゃんまでいるが、みな手加減などという言葉は知らぬが如く、けっこうシビアである。
うちらは最初の考えが至らずに隣り合ってスタートしてしまい、まず相方が数回目で落ち、ぼくも中盤で(前にいた男の子もろとも)ガタイの良いアンちゃんに撥ね飛ばされて失格した。最後の方になるとしだいに参加者も賞品目当てにあくどくなってきて、仲間のうちのひとりを前後で挟んで、なるべく真ん中のひとりのスペースを拡げて椅子を確保させようとしたり(しかし何の因果か、その作戦を実行して最初に消えたのがその真ん中にいた女性だった)、残ったひとつの椅子をふたりでつかんで引っ張って奪い合ったりなんかもあって(観客はこんなときこそヤンヤヤンヤの大声援だ)、しかしそれはそれで盛り上がるから司会者もたいして咎めないのである。



優勝者のプレイは見事であった。最後のふたりが決勝に残ったとき、ふたりは音楽が鳴りだす前、互いの健闘を祈るかのように握手をした(たしか最初に手をさしだしたのは優勝したほうだった)。司会者がマイクで叫んだように、なんとそれはスポーツマンシップに則った友情であっただろう。
決勝のテンポの速い音楽が鳴りだし、ふたりは椅子から1m離れてぐるぐるまわる。音楽は止まらない。音楽はまだ止まらない。まだ止まらない、止まらない、止まらな……
と、その瞬間にふたりが反応した。ひとつしかない椅子の「まえ」にいた男と、「うしろ」にいた男が椅子に跳びかかる!イス取りゲームの最後のふたりなんて、椅子が向いているのは一方向でしかないんだから、ほとんど運任せだ。椅子の「まえ」で止まればそのまま座れるし、「うしろ」なら残念だ。「まえ」の男は当然すべき行動をした。いくら勢い余って倒れようとも、おしりから突撃して椅子に腰を掛ける以外にどんな良策があるというのか!
しかし結果は、(ただひとり優勝した男を除いて)だれもが瞬間におもい描いた結果とは違っていた。「まえ」の男の尻はむなしく雪の上に落ち、そのむこうで「まえ」の男が後ろを向いたその刹那に椅子の背をつかんでじぶんの胸元に引き寄せてしまった「うしろ」の男が、悠々と、雪面に下ろした椅子のうえに腰をかけたのである。
一瞬遅れて事態をのみこんだ観客からは、「まえ」の男を気の毒がる声と「うしろ」の男のあまりに見事な狡猾さへの拍手が巻きあがったのだった……

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こうしてWinterfestival中、ゲレンデ最大のイベント日が幕を閉じたのです。長かった……(書くのが。読んでくれた人もありがとうございますm(__)m)
結局ぼくはこの日、Suitcase Race以外の全イベントに参加し、賞金は1セントたりともゲットすることはできず、体は疲労困憊わずかに動くことも億劫で、治まっていた熱も当然のようにぶりかえし、朝8時半以降なにも食べてないのにバナナとミルクティー以外は口にもできないという散々さながらも、Festivalを全力で楽しんだという満足感に包まれていたのでした。

最初の日記にも書いたとおり"Winter Starts Here"、本格的な「冬はここからはじまる」わけですが、ぼく的にはここでひとまず一段落。
レースの疲れを十分に癒したら、つぎはWanakaの近くにあるCardronaスキー場や、Treble Coneスキー場にも足を延ばしてみたいと思います。Cardronaは9月にテレマークスキー指導員の検定キャンプがあるところだし、Treble Coneには妙高に来てくれたCraigさんの旧友がいるとのことで、共に日本出発まえから楽しみにしていた場所。

というわけで、一段落とはいえ、まだまだニュージーランド・スキーレポートは続きます。お楽しみに!

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